和紙の布開発物語

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PB209263繊維には小さい頃から携わっており、父親の仕事を見てそだってきました。
自分がやるなら、量産できる革新的な機械を入れるということで2代目を引きうけました。この時私は28歳でした。
その頃の繊維産業は生産量が一番ピークで後発でした。

大阪はもともと織物の産地で、全国で3本の指に入る産地でした。
私たちの住む泉州南部地域も、薄利多売の白生地生産の全国でも有数の量産型産地でした。
全盛期の頃は大阪を岸和田で分けてそれよりも南に七百数十社企業がありました。
しかし、十数年前から海外の安価な商品が流通し始め、
ほとんどと言って良いほど、メイドインジャパンの商品が姿を減らしていきました。
その結果、実に97%が倒産もしくは廃業し、現在では二十数社にまで激減しています。

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abesyatyou私たちの地場産業であります繊維事業の生き残りをかけて、
これからどうやって生き残っていくか?

これが繊維に携わる人の命題だと考えています。

私はその時「和紙で生き残っていこう!」そう思いました。
和紙にほれ込んだのが14年前
とにかく「和紙で織物をつくる」というのがその時の目標でした。

ご存知のように紙はつるつるです。
ほかの天然資源、綿、ウールにしてもシルクにしてもすべて、
糸に伸度(繊維、糸、または織物などの引っ張りに対する破断強度と破断するまでの伸び)があります。

しかしながら紙の繊維には伸度がないのです。
この繊維をどうやって織っていけばよいか?
試行錯誤を繰り返し、和紙の布の開発に成功、14年間改良・開発をへて現在に至っています。

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和紙(マニラ麻)は、非常に軽くて(紙の比重0.5g/cm3)毛羽がなく強靱な繊維質であります。
また麻以上にハリ、コシがあり吸湿、吸水、吸汗性、通気性に優れていて、
さらっとした爽やかな触感で他繊維との複合に適しています。

マニラ麻は生育が早く、環境型の資源であり(3年で成長)二酸化炭素の吸収に優れています。
また生分解繊維であり(土中の微生物により炭酸ガスと水に分解)焼却しても有害物質が発生しないなど
多くの利点を備えた究極のエコ素材です。
世界レベルでの地球温暖化問題、環境汚染問題等の、さまざまな問題が指摘されていますが 紙糸織物は、
素材の表現領域を格段に広げ、全く新しい風合い・触感を世界の人々に提案できる、地球環境に優しい生分解繊維です。

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現在、ヨーロッパをはじめ、アメリカにも輸出できる素材となりました。
今日まで継続することができましたのも、多くのお客様、取引先様、
地域社会の皆さま方のご支援とご高配の賜物と心から感謝いたしております。

3代、4代と和紙の布を継承し日本の技術と伝統を世界へ広げて行きたいと思います。
今後とも弊社の取り組みにご期待いただき、より一層のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

最後に私どもは、社会に存在意義を発揮しながら繊維のプロを目指します。

阿部 正登